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生粋の技術者が目指した夢とその末路を描いた「光炎の人」

木内昇さんの「光炎の人」の上下巻を読了したが、素晴らしかった。

 

徳島の貧乏なタバコ農家に生まれた少年が初めて「電気」というオーバーテクノロジーに出会い、徳島を飛び出し、大阪の工場でもの作りの試行錯誤を重ねていくまでが上巻。ライバルに激しく反発しつつ、軍事技術の開発に活路を見いだし、時代の荒波にもまれて満州に向かうところまでが下巻になる。

 

今から100年も前の話なのに、現在われわれが面しているAIやIoT、ロボット、自動運転などに新しいテクノロジーへの向き合い方と完全にオーバーラップしていて学びがすごい。未知の技術に対する無知と抵抗感、それに対する技師たちの思想の違い、もの作りでの経営と現場の意識の差など、実は100年前となにも変わらないのだという感想を得た。途中、恋愛や友情、肉親との葛藤などさまざまなドラマが織り込まれるのだが、とにかくテクノロジーしか見えない主人公には、技術者以外あまり共感できないかもしれない。

 

単行本の装丁が素晴らしく、半分は装丁に惹かれて買ったようなもん。テクノロジーに関わる人のすべてに読んでもらいたすぎる一冊。

 

 

光炎の人 (上)

光炎の人 (上)

 

 

 

光炎の人 (下)

光炎の人 (下)