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歓喜、慙愧、紙吹雪 不運すぎた東京オリンピックに感謝

 オリンピックが終わってしまった。コロナ渦の鬱憤を晴らすような熱戦が毎日続き、毎日テレビにクギづけだった。多くの選手は無観客にも関わらず、イキイキとプレイし、インタビューでは感謝の言葉をくれる。でも、私たちは大手を振って、彼ら・彼女らの感謝の言葉を受ける資格はあるのだろうか?


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歓喜

 

 開会式はピクトグラムとドローンショーが楽しかった。ドローンショーは「日本の技術の粋」みたいな報道もあったが、海外でも実績の高いインテルのドローン。もはや日本は技術大国ではないことを思い知る。それでも、デザイン的に凝りに凝ったオリンピックのロゴを夜空に浮かべたのは、やっぱりよかった。

 

 次の日からは怒濤の観戦生活になった。水谷と伊藤の卓球混合は、決勝戦の前に行なわれたドイツ戦の逆転劇がなにしろすごくて、「そうか。アスリートとは、最後まであきらめない人、競技を楽しめる人のことを指すんだ」と悟った。決勝はめどたく勝てたが、以降の中国との戦いを観ると、どれだけすごい勝利だったかがわかる。

 

 瀬尻さんのラフな実況が話題になったスケートボードやBMXフリースタイルも、信じられないような高度な技に度肝を抜かれた。一番よかったのは女子のBMXフリースタイル。1回目に大失敗したイギリスのシャーロット・ワージントンが、決勝で女子で初めてという360バックフリップの大技をいきなり繰り出し、優勝目前だった王者ハナ・ロバーツを逆転したことだ。テレビの前で大興奮した。個人的にはMVPだ。

 

www.bbc.com

 これらはストリートから生まれたスポーツがオリンピック競技になったわけだが、国威高揚という前世代的な価値観から脱却した若者たちが繰り広げる「自分と仲間たちの戦い」にいたく感銘を受けた。好きな音楽をかけ、好きなファッションに身を包み、チャレンジを続けるアスリートは、みんな笑顔を絶やさず、他のプレイヤーへのリスペクトが厚い。いわゆる体育会系のスポ根とは真反対の存在に見えた。以下の記事はストリートのほうだけど、リアルタイムで観たかったなー。

 

www.nikkansports.com

 

 ベスト4に終わったサッカーはスウェーデン戦、スペイン戦、そしてメキシコ戦とも家族も釘付けになった。卓球の団体も一喜一憂しながら見届けた。野球も、バスケットも、水泳も、柔道も楽しかったが、スポーツクライミングやフェンシングなど普段見る機会のないスポーツも楽しむことができた。オレってこんなスポーツ好きだったっけ?と思うくらいどっぷりオリンピック三昧だった。もっと観たかったけど。

 

 今回、オリンピックにずっぽりはまれた理由はいくつかある。まず日本で開催されているため、放送に時差がないこと。正直、徹夜までして競技を観るというモチベーションはないので、ロンドンも、リオも、そもそも視聴はあきらめていた。チケットとってもリアルで観戦する予定もなかった。それくらいオリンピックとは距離があったのだ。しかし、今回の東京オリンピックはリアルタイムで競技が観られた。テレビをつければ、なんかの競技をやってる。そりゃ観てしまう。

 


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バスケットはなんと銀メダル!

 

 また、インターネットでの配信が普通になったので、リアルタイムに放送が観られなくても、動画が見られるのも大きかった。実際、オーストリアの数学者がトップに輝いたという女子の自転車ロードレースは、4時間以上のレースをバックグラウンドで流しながら観ることができた。ブログやSNSで話題になった試合を後追いで楽しめるのもよかった。

 

 そして、コロナ渦の影響でオレの仕事が完全な在宅勤務に移行したのも大きい。ふらったおテレビをつければオリンピックをやっているので、観たい競技を観たい時間に観ればよい。もちろん、「勤務中に観てるのか」という話になるが、視聴した時間の仕事を別の時間にやればいいはずだ。

 

 そんなこんなで楽しんだ、まさに歓喜のオリンピック。もちろん無観客のイベントは異様ではあったが、開催してくれてよかった。こんな鬱々とした中、素晴らしいプレイを見せてくれたアスリートと大会関係者には感謝の言葉しかない。

 

慙愧

 

 とはいえ、果たしてわれわれは脳天気にアスリートたちにエールを送れる立場なんだっけ?というと、そんなことはまったくない。多くの国民が開催直前までオリンピックの中止を望み、アスリートたちにとっての夢の祭典を奪おうとしていたのは動かしがたい事実だ。なにしろ、今回のオリンピック、延期希望も含めて事前調査では国民の8割が反対していたと言われていたのだ。

 

www.afpbb.com 

 とはいえ、「競技が始まったら、風向きが変わる」というのは、オリンピック委員会も早い段階から出していたコメントだ。報道されたときはさんざん批判されたが、事実、風向きは大きく変わってしまった。さんざんオリンピック中止を求めていた人が「アスリートに罪はない」というコメントだけで、手のひらを返すようにオリンピック賛成になびいてしまった場面を、自分の周りのSNSで数多く見た。結局、なんだかんだ我々の世論は、金メダルラッシュを受けて、管首相や小池都知事の思う通りになびいてしまったのだ。なんだかんだ5月に書かれたこの記事は間違ってなかった。

 

president.jp

 

 私も積極的に開催反対するわけではなかったが、心の中で「えー、こんな状態なのにオリンピックやるのかよ」とは思っていたので、この責めはまぬがれない。だからメディアやSNSの空気に踊らされ、アスリートや大会関係者の想いを寄せることもなく、オリンピックの中止を一瞬たりとも望んだことを、私は後悔している。

 

 その点、自身がコロナウイルスにかかったにもかかわらず、オリンピックの聖火リレーを最後まで全うした石原さとみは本当にえらいと思う。あのときは森さんの発言きっかけに、めちゃ多くの芸能人が最後は聖火リレー辞退したもんな。

 

www.asahi.com

 

花吹雪

 

 オリンピックがあろうが、コロナがなかろうが、どのみち日本は課題山積み。オリンピックが終わったら経済的に坂を駆け下りることはわかっていたはずし、コロナでの経済負荷は未来に繰り越されている。そんな中、狭い島国でいがみあうのではなく、きちんと連携することが重要だと思う。

 

www3.nhk.or.jp

  祭りが終わり、多くのメディアが戦犯捜しみたいなことを始めるのだろう。会期中も「中止しろって言っていたやつは、オリンピック観るなよな」「ボランティア辞めたやつバカだよな」という声もネットにはあふれていた。

 

 でも、そんな声上げたって、誰も幸せにならないよね。まったくつまらない子供の喧嘩。さっさと趣旨替えして、みんなでアスリートたちを応援しようぜと、誰かえらい人が言ってくれればよかったと思う。せめてパラリンピックはみんなで応援して、東京オリンピックというイベントを花吹雪で終わらせたい。

 

 ちなみにタイトルは亡くなった打海文三の作品から。