IOIO

IOのInput&Output

渋谷はコスプレフェスをやらないのか? 豊島区民が考える池袋とコスプレ

ハロウィンの件で池袋が注目されている。毎年、無軌道なハロウィンがニュースになってしまう渋谷区が、今年は「ハロウィンに来ないで」という強いメッセージを強く打ち出したことで、毎年お行儀よいコスプレイベントを開催している池袋は特に注目されるようになったような気がする。今回は豊島区民として、池袋とコスプレ、そして渋谷との違いについて考えてみたいと思う。

「池袋ハロウィンコスプレフェス」は今年で10周年!

 

 

 

コスプレを推進できる豊島区の地の利

ハロウィンコスプレフェスの歴史はすでに10年を数え、すっかり定着した感もある。地元が全面的にバックアップし、オタクのマインドセットを理解するドワンゴアニメイト、ハコスタなどが運営していることもあり、プロも老若男女も楽しめるコスプレイベントとしては国内最大級に成長した。今年は、過去最多の14.1万人が来場し(去年は12万5000人)、渋谷と対象的に好意的に報道されているようだ。

 

news.yahoo.co.jp 

 

しかし、こうなるタネは10年前から撒かれていた。豊島区民からすると、池袋のサブカルシティ計画はやはり消滅都市宣言を受けて以降、故高野前区長がずっと続けてきた活動の一環に見える。自身が強く推進してきたコスプレフェスではご高齢な高野前区長も自らコスプレし、地元の理解を得ながら池袋は長い時間をかけてコスプレやサブカルの街になっていったのだ。

 

こうした経緯もあり、池袋はコスプレやサブカルに寛容だ。池袋の東口にはアニメイトやコスプレ関係の店が数多く立ち並んでおり、サンシャイン前の乙女通りは土日・平日問わず、若者たちであふれる。だから、コスプレフェス会場の東池袋地域は、普段から行き慣れてる場所なはず。イベント主催のドワンゴもピーダッシュパルコに拠点を構えており、普段から行政との連携を密にしている。ドワンゴコンテンツが池袋の施設ではよく流れている。

 

また、池袋コスプレフェスのメイン会場であるイケ・サンパークは、造幣局の跡地に豊島区が造った防災拠点でもある。サンシャインの奥にあり、豊島区民やコスプレ関係者以外はあまり知られていないだろう公園だが、豊島区最大の広さで、最新設備でなかなか快適。自前でこうした公園を持っているのも豊島区の強みだ。

 

そして高野前区長の死去を経て、区政を継ぐと宣言した高際副区長が立候補し、今年の4月に選挙で区民の指示を得て、今に至る。就任半年後に開催されたコスプレフェスでは高添区長もきちんとコスプレしており、「豊島区・池袋がマンガ・アニメ・コスプレの聖地であることを宣言します」と宣言している。

 

前区長からバトンが渡され、サブカルシティへの道を突き進む池袋。もちろん、反対の声はあるだろうが、私には地元の一定の理解を得た継続的な施策に見える。このサブカルシティ施策に関しては自治体の強いイニシアティブ、住民の理解、地元企業との連携、公園や施設などのインフラ、そして施策の継続性が好循環を生んでいる。個人的にはサブカル、エンタメ、クリエイティブ系の会社はもっと池袋に来ても良いと思う。

 

渋谷でハロウィンをやらないのはもったいない?

一方、渋谷ハロウィンの不幸なところは、やはり主催者がいないのに、若者が勝手に集まり、パーティー会場になってしまう点だろう。イベントではなく、単に映える会場として使われてしまうだけ。スクランブル交差点という公道が結果的に会場になってしまう地理的なデメリットもある。

 

ゴミやタバコの散乱に加え、トラブルや痴漢行為も多発し、暴徒化して逮捕者が出たことも過去にはあった。元々はワールドカップのとき、スクランブル交差点で集まったのが始まりらしく、以来ハロウィンになると仮装した若者が湧いて大騒ぎするようになったようだ。これじゃあ、招かざる客になるのは当たり前だ。

 

encount.press

 

本来お客が集まるということで歓迎するはずの地元商店街も迷惑だし、そこに勤める会社員も迷惑。知り合いの渋谷社員も毎度うんざりしてた。「もったいない」という声も多いが、今のハロウィン騒動は「渋谷ならなにしてもいい」と考える無責任な連中のカスタマーハラスメント。地元が「ハロウィン来るな」というのは妥当な判断だと思う。今年の参加者も減ったようだし、ここまで地元から嫌われるのであれば、来年以降はどんどん終息していくと思われる。

 

とはいえ、「同じようなコスプレフェスを渋谷区がやるか?」と言ったら、たぶんやらないだろう。都の管理とはいえ、渋谷区は広大な代々木公園を擁しており、LGBT系のイベントやアジア系のフェスなども盛大に開催されている。しかし、渋谷でコスプレフェスを探すと、民間企業のこじんまりしたものしか見当たらないので、自治体の戦略としてコスプレやサブカルはフォーカスしてないのだろう。豊島区や新宿区がうらやむほどのゲーム・Web会社、スタートアップの集積がある渋谷区であれば、すごいコスプレイベントができると思うのだが、おそらくコスプレやサブカルに対する地元のネガティブなイメージが払拭できないのだと思う。

 

今やジャパニーズ発のコンテンツとなったコスプレを巡る池袋と渋谷の動きの違いを豊島区民の目から見てきた。そのうち元祖サブカルシティである秋葉原、都庁のお膝元である新宿などとの違いも書いてみたい。