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秀吉が仕掛けた密室殺人?「空白の桶狭間」(加藤 廣)

織田信長の天下取りへの道を決定づけた桶狭間の戦い。雨の中に少数で奇襲をかけ、大将である今川義元の首を挙げるという歴史の教科書にも出てくる名高い戦いは、実は後世の作り話?という大胆な仮説がこの本のテーマだ。一部のストーリーや論理に無理はあったものの、歴史のスキマを突くような殺人事件として桶狭間の戦いを扱った点がユニーク。


<以下、ネタバレあり>

大河ドラマでもよく出てくる桶狭間の戦いだが、実はこの戦いにはなぞが多い。信長が2万にもおよぶ大軍を突破し、ピンポイントで義元の元にたどり着いたのはなぜか? 戦後、家康がなぜスピーディーに岡崎城を奪還できたのか? 義元が討ち取られた桶狭間とはそもそもどこなのか?(実は古戦場はいくつかある)

 

本書では、こうした疑問を解消する答えとして、当時まだ足軽大将に過ぎなかった木下藤吉郎が緻密に練った謀略として信長が義元に降伏交渉に行くという話を進める。その場所として選ばれたのがほかならぬ桶狭間だ。さらに藤吉郎は藤原家の先祖として権力闘争の末に山に下った「山の民」という秘密結社のメンバーだったという仮説で、桶狭間で義元を討ち果たすために協力を請うたという裏話も披露される。まさに「桶狭間」を密室とした殺人事件で、あとに残った家康もその真相をつかめずに話が終わる。


鉄砲に慣らすための足軽への訓練や信長の妾とお坊さんの話など、話に直接関係していないストーリーがちりばめられていたり、家康や秀吉の後日談がやや冗長な感じがしたが、なかなか興味深く読んだ。

 

空白の桶狭間 (新潮文庫)

空白の桶狭間 (新潮文庫)