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2021年の買い物(書籍編)どこまでも奥深い中国とドイツの歴史に触れる

今年はまったのはなんといっても浅田次郎の「蒼穹の昴」シリーズ。アヘン戦争、太平天国の乱、義和団の乱などダイナミックな清王朝の終焉を追う。数奇な運命に翻弄される主要登場人物たちの物語は、涙なしに読めない。 蒼穹の昴 全4冊合本版 (講談社文庫) …

清国史が沼だった件

子供の頃の私の自慢は、夏休みに書いた読書感想文が県で入選したことだ。いまライター・記者という仕事についているのも、「ひょっとして自分は文章書くの上手かも!」と勘違いしたせいだったりするので、子供の時のこの手の出来事は意外と人生に影響を与え…

小泉今日子に青春を捧げた十代を描いた「オートリバース」にアラフィフ悶絶

1980年代、小泉今日子にすべてを捧げた二人のティーンエイジャーを鮮烈に描く「オートリバース」読了! 「白いパラソル」がザ・ベストテンのトップとなった1981年9月から、「ヤマトナデシコ七変化」が1位に上り詰める1984年11月までの3年間を80年代汁満載で…

すべての仕事をAIがこなす世界で人間の存在価値を問う「タイタン」

全知全能のAIが仕事をこなす約200年後を描く野崎まどの「タイタン」を読了。コロナ禍でテレワークに大きな注目が集まる中、「仕事とはなにか?」を問いかける一冊。ストーリーとしては正直後半がイマイチだったが、世界観だけで飯が食えるSFではあった。以下…

リアルな開拓史を冷徹に描く「チーム・オベリベリ」読了

今から約140年前に帯広を開拓した晩成社の活動を中心メンバーの妻の目から語る「チーム・オベリベリ」読了。670ページを越える誌面に刻みこまれたのはひたすら苦難とあきらめの連続だった。 文明開化の横浜で先進的な教育を受けた主人公のカネだが、縁談をき…

介護業界の現実を直視した社会派ミステリー「ロスト・ケア」

ロスト・ケア (光文社文庫) 作者: 葉真中顕 出版社/メーカー: 光文社 発売日: 2015/02/10 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (11件) を見る 「絶叫」が面白かったので葉真中顕の処女作であるロスト・ケアを読んでみた。未曾有の数の老人に手をかけながら…

横山三国志世代から見たキングダム

去年、キングダムへのはまりっぷりはすごかった。もちろん存在は知っていたものの、たまたま無料配布版を手にとり、大阪出張のホテルで全巻揃っていたのを読み始めたらもう全然止まらない。ほぼ2ヶ月ずっとはまりっぱなし。迷った挙げ句、海外出張でも躊躇な…

過酷な沖縄現代史に埋もれた人間ドラマを描く「宝島」

太平洋戦争後の混乱に満ちた沖縄を幼なじみから固い絆で結ばれた3人の男女の目から描く真藤順丈の「宝島」読了。 英雄がいなくなった島に残された少年少女が成長し、一人は警察官として、一人はテロリストとして、そして一人は教師として、激動の戦後沖縄か…

SFにない肉体性をSFらしい至近未来設定で描いた「ゲームの王国」

昨年のベストSF2位という小川哲の「ゲームの王国」読了。カンボジアを舞台に二人の少年少女が過酷な内戦期を生き残っていく上巻と、政治家と脳科学者という役割で理不尽な祖国を変えるべく再度2人が絡み合っていく50年後を描く下巻で構成されている。登場人…

インチキ陰謀論への圧倒的な怒りに満ちた「陰謀の日本中世史」

すでに40万部を突破している「応仁の乱」と同時期に企画されたという呉座勇一の「陰謀の日本中世史」読了。「応仁の乱」も、あんなに難しい本がなぜ40万部も売れるのかいまだにわからないのですが、こちらも古文書を読み解き、脚色されてない歴史を読み解く…

知られざる九戸政実の乱を描く「冬を待つ城」

朝鮮への出兵を見越した人狩りを敢行しようとする石田三成の奥州仕置きに異議を唱える奥州北端の九戸氏。押し寄せる6万の大軍に対して、3000の城兵のみで九戸城に立てこもり、極寒の東北の冬を待つ。太古から脈々と続く奥州の大義とは? そして真の敵とは誰…

映画にもなった新時代のリアルSF「火星の人」は傑作

3回目の火星探査ミッションが失敗し、さらに火星を離脱する際に折れたアンテナが1人のクルーを直撃。砂嵐の彼方に消え、当然死んだと思われたマーク・ワトニーは奇跡的生きていた。マークは自らの知識と限られた資材を使って、サバイバルを始める。そして、…

クライマックスで一気に盛り上がる「村上海賊の娘」

石山本願寺に十万石の兵糧を運び入れるべく、毛利方が協力をあおいだ村上水軍の第一次木津川海戦を描いた大作。上下2冊読了しました。 Amazonでのレビューにあるとおり、ヒロインの景が泉州に渡って、石山合戦にからんでいく前半はやや冗長。後半の木津川海…

南北朝時代のカオスを体現した波乱の高師直伝「野望の憑依者」

今度の伊東潤は足利家の家宰・高師直(こうのもろなお)が主人公。主君の足利尊氏とともに、鎌倉幕府を裏切り、後醍醐天皇を裏切り、室町幕府創設に尽力しますが、最後は尊氏の弟である直義との壮絶な権力争いに敗れます。 まあ普通しらんがなというマイナー…

10万対80という戦いの行方は?のぼうの城のファイアー版「火男」

室町時代、足利持氏の遺児の反乱を鎮圧すべく、古河城に押し寄せた10万の大軍。城を守るのは火を自由に操る異彩の男、そして80名の雑多な侍たち。果たして、勝てるのか? 籠城側の少人数が、奇想天外な方法で数多くの敵をやっつけるというプロットは、楠木正…

足利将軍をすげ替えた細川政元を描く「天魔ゆく空」

応仁の乱以後、足利将軍をクーデターですげ替えた細川政元を描いた「天魔ゆく空」(文庫本)の上下読了です。 最近は、「北条早雲-青雲飛翔篇」(富樫 倫太郎)を読んだおかげで、すっかり室町ブームです。歴史の教科書的には、応仁の乱が終わって、室町幕…

女性の業を肯定してきた「ユーミンの罪」は男性も納得

ユーミンが女性たちの業をどのように肯定してきたか?「ひこうき雲」から 「DAWN PURPLE」までの歌詞をひもときながら検証していく。J-WAVEリスナーのかみさんが最近、ユーミンをかけることが多く、思わず手に取った一冊。久しぶりに血まみれでない本を読ん…

武田軍を食いつくす悪魔の城を描く「翳りの城」

襲いかかる武田軍を次々と喰らいつくす悪魔の城。世にも恐ろしいキリングフィールドを作り上げたのは、平和な生活を蹂躙された者たちのすさまじいまでの怨念と、数奇な運命をたどってきたある異邦人の過去の清算だった。 三吉 眞一郎という新人さんのデビュ…

電子脳が義務化された時代の全知全能を描く「know」

超情報化のため、人造の脳葉である(電子葉)の移植が義務化された2081年。情報庁に務める主人公は、恩師から託された少女が導く、あまりにも大きな世界の変化を目の当たりにする。 伊藤 計劃の名作「ハーモニー」を彷彿させる表紙に釣られて買ったが、これ…

幕末の片隅に残る血みどろのドキュメンタリー「義烈千秋 天狗党、西へ」

幕末の歴史のほんの片隅に残る「天狗党の乱」。尊皇攘夷を訴える平和的なデモンストレーション集団が、いつの間にか倒幕勢力とされ、激しい水戸藩内の内部抗争に巻き込まれていく。数々の激戦を経て、京都にいる一橋慶喜に己の本意を訴えるべく、中山道をひ…

法治国家の江戸幕府を作った金地院崇伝を描く「黒衣の宰相」

ブックリストに、にわかに坊主ブームが来ております。まず手に取ったのは、法治国家としての徳川幕府の礎を作った金地院崇伝の一生を天地人の火坂雅志が描いた「黒衣の宰相」です。結論からいえば、傑作です。火坂さんの本は何冊か読んでますが、正直1・2を…

圧倒的な読後感。至極の満足度。冲方丁「光圀伝」

750ページという大ボリュームの歴史大作「光圀伝」をようやく読了。会社の行き帰りで持ち歩くのは大変だろうと思い、お盆休みから読み始めたが、ようやく読み終わった。 水戸藩2代目となる光圀を少年期から死ぬまで追い続ける伝記になるのだが、水になるはず…

現実の延長上にあるSF「百年法」

山田宗樹の渾身作「百年法」上下を読了した。いやあ、実に面白かった!太平洋戦争で原発6発をくらって国土が崩壊した日本が、アメリカの技術を導入したことで不老不死を得る。しかし、このままだと人口が増え続け、世代が入れ替わらないので、100年の生存期…

秀吉が仕掛けた密室殺人?「空白の桶狭間」(加藤 廣)

織田信長の天下取りへの道を決定づけた桶狭間の戦い。雨の中に少数で奇襲をかけ、大将である今川義元の首を挙げるという歴史の教科書にも出てくる名高い戦いは、実は後世の作り話?という大胆な仮説がこの本のテーマだ。一部のストーリーや論理に無理はあっ…

貴志 祐介「新世界より」はダークなハリーポッターか?

さすが貴志さん。すごいよ。傑作だよ! 呪力というサイコキネスを利用できるようになった人間が細々と生活する1000年後の世界をベースに、主人公の少女が自らが体験した不可思議な学園生活や大量殺人事件、化け物との戦いなどを手記として記している。異境の…