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現実の延長上にあるSF「百年法」

山田宗樹の渾身作「百年法」上下を読了した。いやあ、実に面白かった!太平洋戦争で原発6発をくらって国土が崩壊した日本が、アメリカの技術を導入したことで不老不死を得る。しかし、このままだと人口が増え続け、世代が入れ替わらないので、100年の生存期限を法律で設けるという設定。この「百年法」をめぐる世代を越えたドラマが描かれる。

 

まずは設定がリアル。太平洋戦争のあとに不老不死が導入されたら?というパラレルワールドなのだが、政治、経済、社会などの動向がきちんと描かれており、百年法の実施についても無理がない。ここらへんがバトルロワイヤルなどと大きな違い。

 

魅力はやはりキャラクター。100年生きても、死は圧倒的な迫力を持って迫る。それを受け入れる人、対抗する人、そしてあえて不老不死という選択肢を捨てた人。偉い人も、普通の人も、それぞれがそれぞれの苦悶と理想を抱え、生きる。その姿がまさにドラマだ。

 

真の危機に立ち向かうラスト。人間としての尊厳を問うという帯の文句は間違っていない。SFで書き込まれすぎるディテールへの能力を、人物描写に充てたことで、卓越した小説に仕上がったといえる。

 

現時点では今年読んだ本のベストです。

 

百年法 (上) (角川文庫)

百年法 (上) (角川文庫)

 

 

 

百年法 (下) (角川文庫)

百年法 (下) (角川文庫)