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法治国家の江戸幕府を作った金地院崇伝を描く「黒衣の宰相」

ブックリストに、にわかに坊主ブームが来ております。まず手に取ったのは、法治国家としての徳川幕府の礎を作った金地院崇伝の一生を天地人火坂雅志が描いた「黒衣の宰相」です。結論からいえば、傑作です。火坂さんの本は何冊か読んでますが、正直1・2を争う出来のよさです。

 

金地院崇伝といえば、天海や沢庵ととともに、江戸時代初期に政治に関わった僧侶として知られていますが、後書きに火坂さんが書いているとおり、きわめて悪評が高い人物です。秀頼が建立した方広寺の鐘の「国家安康 君臣豊楽」をネタに豊臣家にいちゃもんを付け、大阪の陣を導いたからです。僧侶でありながら、政治に深く関わり、天皇や貴族、寺社勢力などに強い影響力をもたらしました。当然、あこぎな裏工作も数多く手がけた、完全に政治屋です。

 

こんなブラックな坊主を火坂は「戦乱の世を終わらせるために、あえて自分がすべての泥をかぶる」という覚悟を持った人物として描きます。その背景として、没落した武家の子として僧侶になった過去、海外留学に失敗した経験などが描かれています。単に自身の理想を貫く高邁な僧ではなく、俗世間を生き抜くために恋人や友人を裏切る彼の苦悩を描いているところが、とても共感できます。江戸初期というバサラな時代を反映し、怪しい貴族、美少女忍者、怪僧、エンジニア、ビジネスマンなど登場人物も実に個性豊かで、750ページの長尺もまったく飽きることがありません。絶対無理ですけど、大河ドラマでもいいかもw

 

黒衣の宰相 (文春文庫)

黒衣の宰相 (文春文庫)

 

 


で、坊主ブームの第2弾は安国寺恵瓊の予定です。