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映画にもなった新時代のリアルSF「火星の人」は傑作

3回目の火星探査ミッションが失敗し、さらに火星を離脱する際に折れたアンテナが1人のクルーを直撃。砂嵐の彼方に消え、当然死んだと思われたマーク・ワトニーは奇跡的生きていた。マークは自らの知識と限られた資材を使って、サバイバルを始める。そして、その日々の戦いを日記につけ続ける。

 

Amazon自費出版したら、爆発的にダウンロードされたという経緯を持つ著者のデビュー作は、「ロビンソンクルーソーの火星編」とも呼ばれているらしい。簡易住居と生命維持装置、移動手段のローバーしかない。通信手段がなく、そもそも死んでいると思われているので、救出される可能性すらないという孤独な戦い。しかし、マークは希望とユーモアを捨てず、自らの知識で、食料を作り、酸素を作り、水を作り、サバイバルを続ける。途中からは、彼の生存に気づく地球(NASA)側の救出プロジェクトも進むが、次々とトラブルが襲う。

 

作者自体が、学者であり、強力な宇宙オタクらしいので、難解な部分も多々あるが、映画化も予定されているだけに、実に物語作りがうまい。とはいえ、一貫しているのは、徹底的に現実的な視線。数々のトラブルには、陰謀も、奇跡も、僥倖もない。本当にハードな大人のSFだと思う。

 

普段、翻訳のSFは読まないのだけど、帯がどうしても気になって買った一冊だったが、米国出張の行き帰りで本当に一気に読んでしまった。

 

火星の人

火星の人