襲いかかる武田軍を次々と喰らいつくす悪魔の城。世にも恐ろしいキリングフィールドを作り上げたのは、平和な生活を蹂躙された者たちのすさまじいまでの怨念と、数奇な運命をたどってきたある異邦人の過去の清算だった。
三吉 眞一郎という新人さんのデビュー作だが、これは本当に面白かった。ページをめくる手が止まらないとは、まさにこのこと。以前も書いたが、禍々しさ満点の城に向かう武田軍を描いたカバーイラストを中心に装丁が素晴らしい。Q数大きめの一段の本編しかり、歴史好きを確実に揺さぶる帯しかり、(大変失礼ながら)竹書房とは思えないレベルの高さ。見直しました。
内容も冒頭のとおりなのだが、とにかくまずは攻めかかる武田兵たちを次々と殺戮されていく様を描く。ジェノサイド(高野和明)や悪の教典(貴志 祐介)に勝るとも劣らぬスプラッタぶり。しかも命の軽い戦国時代なので、飛び交う血の量が半端ない。守っている側が見えず、なんとも不気味。そこから攻める側、守る側の人物のストーリーが展開され、最後まで引っ張る。途中で秘密兵器が出たり、意外な人間ドラマが展開されたり、「悪魔の城の罠」という冒頭のインパクトに頼らないストーリー作りで、飽きさせない。ラストに関しては、いろいろ意見あると思うが、私は好き。