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後期高齢者の終活探しを描く「すぐ死ぬんだから」

「くすんだジジババにはなりたくない」。見た目に手を抜かない後期高齢者女性の終活探しを描く内舘牧子「すぐ死ぬんだから」読了。かみさんからのオススメで読んでみましたが、老いや散りぎわ、家族について考えさせられる実にさわやかな一冊でした。

すぐ死ぬんだから

すぐ死ぬんだから

 

 

主人公の忍ハナは78歳。おそらく私が読んだ小説の中でもっとも高齢です。とはいえ、老女とも、おばあちゃんとも、表現しにくいのは気位が高く、身だしなみや美容にも気を使うあきらめのない女性だからです(だから後期高齢者なのですが)。店員に歳上に見られた過去の経験から、体の線を隠す楽な服をまとい、リュックを背負い、すぐに死ぬんだからとあきらめた老人を嫌悪して、かくしゃくとした老人として生きています。

 

ここまで聞くと、かなり鼻持ちならない嫌なやつ。実際、家族や同世代の老人には相当辛辣な台詞を吐きますが、これがなんともスカッとする毒。安易に老いを迎える老人やそれを強いる世間、若者への痛烈な批判になってます。

 

とはいえ、一人称で語られる本書のハナさんも多くの不安と悩みを抱えていて、あと十歳若ければという嘆きがそこここに出てきます。それでも負けないし、折れない。でも、中間部分から沸き起こってくる家族を巻き込む一大事件でその信念を揺るがされます。単純な高齢化社会への批判や問題提起に終わらず、きちんと最後まで読み逃せないストーリーになっているのがさすがだと思いました。

 

脚本家なので、ハナさんの回りの個性豊かな家族の描写も素晴らしく、かみさんと二人でドラマ化したらどんな配役がいいか話し合いました。私は加賀まりこ推しです。これを機に終活小説ブーム来そうな予感がします。